ChatGPTのコンシューマー製品責任者Adam Fry氏は、2026年11月2日夜(米国時間)にニューヨークでOpenAIが開いた夕食会の対談で、ChatGPTの「検索的な質問」の量が現在Googleの質問量のおよそ5分の1になったと述べた。対談の書き起こしは、聞き手を務めたAlex Kantrowitz氏のニュースレターBig Technologyが11月3日に公開した。
Fry氏は、質問を受けてウェブ検索を行うたびに1回の検索と数えると説明した。比較に使ったGoogle側の数値、対象期間、対象地域は示していない。同じ記事は、ChatGPTの週間アクティブ利用者が60日間で10億人から12億人に増えたこと、音声入力と音声モードの週間利用者が合計2億5,000万人であることも伝えている。いずれも同社の自己申告で、OpenAIの公式ブログなどでの発表は確認できなかった。
一方、Ahrefsが11月3日に更新した流入計測(11万8,671サイト、2026年10月分)では、Googleからの訪問が全流入の24.74%(2億9,780万件)、ChatGPTからは0.36%(430万件)、主要AIアシスタント合計で0.46%(540万件)だった。Alphabetは10月28日の第3四半期決算で、検索の質問数の前年比伸び率が過去5年で最も高いと説明しており、件数は公表していない。
なぜ重要か
「質問量では5分の1」と「サイトへの流入では約70分の1」という二つの数字の差は、ChatGPTでは多くの検索が回答の中で完結し、企業サイトへの訪問に結びつきにくいことを示唆する。ただし両者は定義も母数も異なり、直接の比較はできない。
日本企業にとっての示唆は、AI検索の影響を流入数だけで測ると過小評価になりやすいという点である。サイトへの訪問が少なくても、比較や候補選びの段階でAIの回答に自社が含まれるかどうかが、意思決定に影響し得る。OpenAIの数値は第三者検証のない口頭発言であり、地域別の内訳もないため、日本市場の配分判断にそのまま当てはめるのは避けたい。
出典:Alphabet 2026年第3四半期決算リリース(2026年10月28日) 関連報道:Search Engine Journal(2026年11月)
Iteraは2026年11月3日、LLMOツール「LLMOチェキ」の計測タグ「LLMO Tag」を拡張し、AI検索経由の訪問が問い合わせなどの成果につながったかを把握できる「AI流入コンバージョン計測」の提供を同日に始めた。全プランで追加費用なしで使える。
サイトに1行のタグを設置すると、ChatGPT、Perplexity、Gemini、Copilot、Claudeからの訪問と、その後の成果をAIエンジン別に集計する。着地後に別のページで成果が発生した場合も、同じタブ内で30分以内であれば着地時の判定を引き継ぐ。AIボットのクロール、AI回答での引用、AI経由の訪問、コンバージョンの4段階を1画面のファネルで確認でき、CSVでも出力できる。
質問別の成果は、AIの回答で引用されたページと流入ページを突き合わせて按分した推定値である。Google AI OverviewとAIモードからの流入は、参照元の情報で判別できないため対象外とした。Cookieは使わず、IPアドレスやユーザーエージェントの生データも取得・保存しないとしている。
なぜ重要か
国内のGEO/LLMOツールはこれまで、AI回答での言及率や引用率といった「露出」の計測が中心だった。今回の機能は、露出から問い合わせまでを一続きで見る方向への拡張であり、AI経由の施策を売上や商談の言葉で説明したい企業の需要に応えるものである。
一方で、質問別の成果は推定値であり、国内で利用の多いGoogleのAI機能は計測の対象外である。AI経由の成果を評価する際は、どの流入が見えていて、どこが推定で、何が見えていないのかを区別して報告する必要がある。
出典:Itera「『LLMOチェキ』、AI検索経由の訪問が問い合わせに結びついたかをエンジン別・質問別に把握できる機能を提供開始」PR TIMES(2026年11月3日)
Today's Insight
AI検索の価値は「流入」では測りきれず、見えている範囲と推定の範囲を分けて語る段階に入った
今日の2本は、同じ問題を別の側から見ている。OpenAIは質問の量を、Iteraは訪問後の成果を示した。両者の間にあるのは、AIの回答のなかで起きているものの、企業のサイトには記録されない意思決定である。
OpenAI幹部によれば、ChatGPTの検索的な質問量はGoogleの約5分の1に達した。しかしAhrefsの計測では、ChatGPTからの流入はGoogleの約70分の1にとどまる。定義の異なる数字を単純に比べることはできないが、AI検索では「質問されること」と「訪問されること」が大きく離れている可能性が高い。
この差を埋める手段として、計測ツールは露出と成果を結ぶ方向に進んでいる。ただし今日の事例が示すとおり、その接続には推定が入り、GoogleのAI機能のように参照元で判別できない経路も残る。AI経由の成果を一つの数字で示そうとするほど、その数字の前提が見えにくくなる。
AI検索の評価で問われるのは、流入数の大きさではなく、計測できた部分・推定した部分・見えない部分を区別して示せるかどうかである。
日本企業の実務としては、三つを勧めたい。第一に、AI経由の流入と成果を自社サイトで記録し、エンジン別の基準値を残すこと。第二に、AI回答での言及・引用の状況を、流入とは別の指標として定点で観測すること。第三に、ツールやプラットフォームが示す数値は、定義と母数を確認したうえで社内報告に使うことである。
OpenAIの発言は口頭の自己申告で、地域別の内訳もない。日本での実態は、外部の大きな数字ではなく、自社の記録からしか確かめられない。
AIが入口になるほど、自社で測れる範囲を自ら定義している企業ほど、投資判断を誤りにくくなる。