LINEヤフーは2026年10月28日、Yahoo!ショッピングで「AIベスト提案」の提供を順次開始した。利用者が希望条件を指定すると、AIが条件に合う商品を約10秒で抽出し、価格・お届け予定・レビューとともにランキング形式で示す。PC(Webブラウザー)とiOS・Android版アプリの商品詳細ページ、お気に入りページから使えるが、端末によっては表示されない場合がある。
ランキングは4種類である。「価格」は商品価格からクーポン割引額とポイントを差し引き、送料を加えた額でお得に買える順に並べるため、利用者ごとに順位が変わり得る。「お届け」はお届け予定が早い順、「評価」は商品レビューの評価が高い順、「ベスト」は3つの順位から総合順位を算出する。
この機能は、生成AIで複数商品を比較して1商品を総合的に提案していた「AIおまかせ比較」を刷新したものである。同社によれば、旧機能では価格も考慮していたが、提案された商品が必ずしも最安とは限らなかった。また、旧機能の比較軸のうち「お得」が31%を占め、Yahoo!ショッピング利用者の3人に1人が「おトクな日を提案する機能」を利用しているという。調査期間や方法は発表文に記載がない。AI機能にはOpenAIのAPIを使用している。
なぜ重要か
国内大手ECモールのAIが、「おすすめの1品」を示す形から、価格・配送・評価という明示された基準で候補を並べる形に切り替わった。出店者にとっては、AIに選ばれるかどうかが、商品説明の巧拙よりも、クーポン・ポイント設計、送料、配送リードタイム、レビュー評価という数値で決まる比重が高まることを意味する。
特に「価格」順位が実質負担額で計算される点は、販促費の使い方に直結する。表示価格を下げなくても、クーポンやポイントの付け方でAIの順位が動き得るため、モール内のAI導線を意識した販促設計と、在庫・出荷体制の見直しが必要になる。
出典:LINEヤフー プレスリリース「Yahoo!ショッピング、『お得』を重視するAI利用傾向を踏まえ、『AIベスト提案』を提供開始」(2026年10月28日) 関連報道:Web担当者Forum(2026年10月29日)
Googleは2026年10月28日、AI Modeの広告をオーストラリア、カナダ、インド、ケニア、マレーシア、ニュージーランド、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、シンガポールの10か国に拡大していると発表した。2026年第4四半期にはブラジル、メキシコ、英国などにも広げる計画である。日本は今回の対象国・予定国のいずれにも含まれていない。
あわせて米国では、AI Modeでの追加質問(フォローアップ)にも広告を表示できる「マルチターン広告」の提供を始めた。広告には「Sponsored」の表示が付く。Googleは新たな広告フォーマットのテストを続けるとしている。
Googleは根拠として、AI Modeの質問は従来の検索より平均で3倍長いこと(2026年5月、米国の同社レポート)、AI Mode内の商品リストで、広告枠と自然枠のクリック率がすでに同程度であること(2026年8月20日〜9月3日の米国の社内データ)を挙げている。
なぜ重要か
AI検索の広告が米国のテスト段階を越え、英語圏・アジア太平洋を中心に複数市場へ広がり始めた。日本は対象外だが、マルチターン広告は、1回の検索語句ではなく会話の流れの中で広告が選ばれる設計であり、米国で始まった形式が後から他市場に広がる流れは今回の拡大でも確認できる。
日本企業のうち、オーストラリアやシンガポールなど対象国で検索広告を運用している企業は、すでにAI Modeの広告枠が配信先になり得る。国内向けの企業にとっても、長く具体的な質問に答えられる商品情報と、広告と自然枠の区別が薄れる商品リストを前提に、商品フィードとランディングページの情報量を整えておく時間は残っている。
出典:Google Ads & Commerce Blog「Ads in AI Mode expand to new markets.」(2026年10月28日) 関連報道:TechCrunch(2026年10月28日)
Today's Insight
AIの商品提案は「数値で比べられる条件」と「会話の文脈」で決まり始めた
今日の2本は、日本のECモールと米国発のAI検索という異なる場所で、AIが商品を薦める仕組みが具体的な形を取り始めたことを示している。
Yahoo!ショッピングの「AIベスト提案」は、AIによる「総合的な1品の提案」をやめ、実質負担額、お届けの早さ、レビュー評価という比較可能な基準で候補を順位づける形に変えた。旧機能で「お得」が比較軸の31%を占めたという利用実態が、その背景にある。GoogleのAI Modeの広告は10か国に広がり、米国では追加質問にも広告を出すマルチターン広告が始まった。AI Mode内の商品リストでは、広告枠と自然枠のクリック率がすでに同程度だという。
両者に共通するのは、AIが商品を選ぶ場面で、利用者が明示した条件と会話の文脈が判断の起点になっている点である。モールのAIは利用者が選んだ条件で並べ替え、AI検索は長い質問や追加質問の流れの中で広告と商品リストを差し込む。どちらも、企業側が言葉で訴求する余地より、AIが読み取れる事実の量と正確さが結果を左右する構造である。
AIに選ばれる条件は、ブランドの印象ではなく、価格・配送・評価・商品属性という「AIが比較できる事実」に移りつつある。
日本企業にとっての示唆は二つある。第一に、モール出店企業は、クーポン・ポイント・送料・配送日数・レビューを、AIの順位を決める入力として一体で管理すること。第二に、AI Modeの広告が日本に来る時期は公表されていないが、長く具体的な質問に答えられる商品データとページを整えることは、自然枠と広告枠のどちらにも効く準備になる。
AI経由の集客を測るうえでも、まず「AIが比較に使う事実」を自社が正しく出しているかを点検することが出発点になる。