OpenAIのヘルプによれば、ChatGPT広告の「creative enhancements」は2026年10月30日から、新規・既存のキャンペーンで自動的に有効になった。既存の広告とランディングページの内容をもとに、会話の文脈や利用者の関心に合わせて広告を調整する機能である。
変更され得るのは、見出しと説明文の新規作成・更新、広告文の他言語への翻訳、画像のサイズ変更、リンク先URLの最適化である。リンク先は、自社サイト内の関連ページに変わる場合がある。バリエーションは事前に用意されるか、会話に応じてリアルタイムで生成される。
有効な場合、広告主が各バージョンを確認・承認しなくても配信され、すべてのバリエーションをプレビューする手段はない。無効化はAds Managerの「Manage settings」から行う。既存のアカウント単位・キャンペーン単位のオプトアウトは維持され、キャンペーン単位の設定が優先される。ヘルプに地域別の適用条件の記載はない。
レポートではキャンペーン、広告グループ、広告の単位で表示回数、クリック、費用、CTR、コンバージョンを確認できる。ただしOpenAIは、指標の経時変化だけではcreative enhancementsの効果を立証できないとしている。
なぜ重要か
ChatGPT広告は2026年6月に日本でも配信が始まり、電通デジタルやHakuhodo DY ONEなどが取り扱っている。日本で出稿中の広告主は、何もしなければ広告文やリンク先がAIに書き換えられる設定になった可能性があるため、まず自社アカウントの設定を確認する必要がある。
特に注意が要るのは、薬機法や景品表示法に関わる表現を審査している業種、料金や条件の表記が厳密な金融・不動産、ブランドのトーンを統一している企業である。OpenAIは広告とランディングページの情報を最新に保つよう求めており、ランディングページの古い価格や条件が、広告文に反映されるおそれもある。
計測面では、変更後のリンク先にUTMパラメータが引き継がれるかについて、creative enhancementsのヘルプは言及していない。Search Engine Journalもこの点を未解決の論点として挙げている。有効のまま運用する場合は、効果検証の前に、リンク先別の流入と計測タグを点検しておきたい。
出典:OpenAI Help Center「Creative enhancements for ChatGPT Ads」(2026年10月30日適用開始) 関連報道:Search Engine Journal(2026年10月30日) 関連報道:Impress Watch(2026年6月19日)
Google、OpenAI、Microsoftは2026年10月30日、robots.txtでAI学習の可否を複数のAI事業者にまとめて伝える共通の信号に対応すると発表した。Anthropicの関係者も同日、IETFのメーリングリストで、同社がこの提案への対応実装を始めたと表明した。
信号は「__usage_ai-training」というポリシートークンで、robots.txtのUser-agent行に書く。Disallowで学習への利用を望まない意思、Allowで許容する意思を示す。同日付のInternet-Draftは、これはクロールの制御ではなく、`User-Agent: *` のグループは該当しないと定めている。ただし現時点では個人提案のドラフトで、IETFの承認を受けた標準ではない。
対応時期は各社で異なる。Googleはドキュメントで2027年初頭と記し、このトークンで学習を拒否したサイトについて、Google-Extendedの指定がなければGoogle-Extendedを拒否したものとして扱う方針である。OpenAIとAnthropicは今後数か月で対応するとしている。各社の既存の制御は引き続き有効である。
Microsoftはさらに、学習とは別に、回答生成の根拠としての利用(グラウンディング)をページ単位で指定できる設定を設ける。2027年2月1日からクロール時に新設定を反映し、NoArchiveとNoCacheは2027年3月1日以降、学習・グラウンディングの設定として読まれなくなる。Bing検索結果への掲載資格は変わらないとしている。
なぜ重要か
これまでAI学習を拒否するには、事業者ごとのクローラー名を調べて個別に記述する必要があった。共通信号が実装されれば、自社サイトのAI方針を一度の記述で表明しやすくなる。
一方で、この信号が示すのは学習についての意思だけである。Microsoftは、グラウンディングを拒否すればAI体験でのブランドの可視性が下がると明記しており、学習と回答での引用は別々に判断する段階に入った。AI検索での露出を重視する日本企業は、「AIを全部止める」か「全部許す」かではなく、用途別の方針を決めておく必要がある。
NoArchiveやNoCacheでMicrosoftのAI利用を制御している企業には、2027年3月1日という具体的な移行期限が生じた。社内のサイト管理者とマーケティング部門で、現在のrobots.txtとメタタグの設定を棚卸ししておきたい。
出典:IETF Internet-Draft draft-kelley-aipref-training-preference-signal-00(2026年10月30日) 関連報道:Search Engine Roundtable(2026年10月30日)
Shopifyは開発者向けドキュメントで、AIエージェント向けカタログの検索結果に販促商品を混ぜて返す「Promoted placements」を公開した。現在はDeveloper Previewで、ウェイトリストを経た招待制である。料率や項目名、挙動は一般提供までに変わる可能性があるとしている。
エージェントの開発者には、販促商品の購入に対して基本0.3%のコミッションが支払われる。帰属はラストノンダイレクトクリックで期間は7日間、注文内の対象商品すべてが計算対象となり、キャンセルや返品の分は取り消される。
店舗はShop Campaignsを通じて料率を上乗せでき、ドキュメントの例では合計1.5%である。上乗せは米国で実施中のキャンペーン商品に限られ、支払いは米ドルで、購入がShopアプリかshop.comで完了した場合にのみ適用される。店舗サイトでの購入は基本料率のみとなる。
開発者には、コミッションを得る可能性の開示と、販促結果を自然な結果と区別する表示が求められる。開示を画面下部やプライバシーポリシーに埋もれさせてはならないとしている。コミッションが順位に影響するかどうかは、ドキュメントに記載がない。
なぜ重要か
AIエージェントの推薦に、成果報酬型の広告の仕組みが組み込まれ始めた。店舗が料率を上乗せできる対象は現在米国に限られ、日本のShopify店舗にすぐ影響する話ではない。ただし、エージェントを開発する企業に販売の対価が入る構造は、推薦の中立性と開示のあり方に直結する。
日本で今後、同様の仕組みがエージェント経由の販売に広がれば、販売手数料の設計と景品表示法上のステルスマーケティング規制への対応が論点になり得る。自社のAIエージェントや比較サービスを運営する企業は、販促結果の表示方法を先に検討しておく価値がある。
出典:Shopify Developer Documentation「Promoted placements」(2026年10月27日時点で掲載確認) 関連報道:Search Engine Journal(2026年10月30日)
Today's Insight
AIが広告・学習・推薦を自動化するほど、企業に問われるのは「既定値」の管理である
今日の3本に共通するのは、AIと企業の関係を決める設定が、はっきりと明文化され始めたことである。
ChatGPT広告では、10月30日から見出しやリンク先の自動変更が既定で有効になった。AI学習については、主要各社がrobots.txtの共通信号に対応すると発表した。Microsoftは、信号や設定がなければ学習もグラウンディングも許可として扱う。Shopifyのカタログでは、販促商品が自然な結果に混ざって返され、開発者に料率が示される。
いずれの場合も、企業が何もしなければ何かが自動で起きる。広告文は書き換えられ得るし、コンテンツは学習と回答の材料として扱われ得る。AIの推薦には、商業的な関係が入り得る。
AI時代の統制は、施策を増やすことより、各社の既定値を把握し、意図して選び直すことから始まる。
その際に大切なのは、自動化を止めるか否かの二択にしないことである。Microsoftの説明どおり、グラウンディングを拒否すればAI上のブランドの可視性は下がる。ChatGPT広告の自動変更も、広告が会話に合う余地を広げる一方で、表現の統制と計測を難しくする。露出と統制は別々に調整するものになった。
日本企業の実務としては、次の三点を勧めたい。第一に、ChatGPT広告の設定と、リンク先別の計測を今すぐ確認すること。第二に、AI学習と回答での引用を分け、サイトの用途別に方針を文書化すること。第三に、AI経由の推薦に広告や手数料が含まれるのかを、自社が売る側でも運営する側でも確認できる状態にしておくことである。
AIの変化を追う部門には、機能の一覧よりも、自社に適用されている既定値の一覧が必要になっている。