イオンネクストは2026年10月22日、ネット専用スーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」で、Google CloudのAI技術を活用し、商品選びから注文・決済までを一連の対話で進められる「エージェンティック・コマース」の実現に取り組むと発表した。実装は2026年度中を目指す。
AIとの対話を通じて顧客の希望に合った商品を提案し、配送枠の選択、注文・決済までをグリーンビーンズ上で完結させる仕組みを構築する。外部AIサービスとの連携には、英Ocado社が開発するインターフェース基盤を使う。
商品マスタには、特定原材料などの含有情報、特定成分の不使用情報、認証情報など数百項目の商品情報を登録しており、これをマルチモーダルAIと組み合わせて、アレルギーや食の好みを踏まえた提案を支えるとしている。購入履歴などの顧客データ、実際の在庫状況、自社配送網の配送枠の空き状況とも連携する。
出典:イオンネクスト ニュースリリース「AIコンシェルジュとの対話で新たな買い物体験の実現へ」(2026年10月22日)関連報道:LOGI-BIZ online(2026年10月23日)
博報堂は2026年10月26日、新聞社・出版社の編集力を生成AI時代のブランドコミュニケーションに生かすプロジェクト「Shomei AIO」を始動したと発表した。第1弾の取り組みを開始しており、対象の商品カテゴリーと参加メディアを段階的に拡大する予定である。参加する媒体名や社数は公表されていない。
仕組みは3段階で、①生活者がAIに投げかける問いを、購買検討のきっかけとなる場面(カテゴリーエントリーポイント)ごとに編集部が設計し、②その問いに答えるタイアップ記事を博報堂のAIO知見と組み合わせて企画・制作し、③各媒体に適したメディアやプラットフォームで展開する。記事は広告であることを明示し、各媒体の編集方針と生成AIに関するポリシーを尊重するとしている。
あわせて、AI回答での自社・競合ブランドの引用状況を診断し、どの場面でどの編集部と組むかの判断や記事の再活用を支援する「Shomei AIO Planner(仮称)」を開発中である。
出典:博報堂 プレスリリース「Shomei AIO」始動(2026年10月26日)関連報道:Web担当者Forum(2026年10月27日)
Shopifyは2026年10月13日、開発者向けに「Shop MCP」を公開した。単一のMCP接続で、エージェントやアプリが10億点超の商品を収録するShopify Catalogを検索し、カートを作り、Shop Payで決済まで完了できる。検索にはAPIキーが不要で、エージェント経由の注文は通常の注文と同様に加盟店の管理画面に入る。
消費者向けには、ChatGPTやClaudeなどのAIアシスタントに追加できるスキル「shop.md」を用意した。Shopアカウントを連携すると、パーソナライズ検索、Shop Payでの決済、Shopアプリでの注文追跡ができる。Shopのヘルプによれば、既定ではエージェントが情報を入力済みのチェックアウトを用意し、利用者が購入ごとに確認・承認する。任意で月額・週額・総額の予算を設定してエージェントに支払いを任せることもでき、接続はいつでも解除できる。
公式の発表・ヘルプとも提供地域は明記していない。開発者向けページの配送先フィルターは米国、カナダ、英国、オーストラリアに限られている。
出典:Shop ヘルプセンター「Using Shop with personal AI agents」関連報道:Shopifreaks(2026年10月13日)
Today's Insight
AIが「売り場」になるとき、競争の単位は商品データと信頼できる言及に変わる
今日の3本は、AIとの対話が情報収集の場から、比較・選択・購入の場へ移りつつあることを、小売、広告、プラットフォームの三つの立場から示している。
イオンネクストは、対話で商品提案から配送枠の選択、注文・決済までを完結させる仕組みを2026年度中に実装するとした。Shopifyは、提携の有無を問わずAIエージェントが10億点超のカタログを検索し、Shop Payで決済できる基盤を開放した。博報堂は、生活者がAIに投げかける問いを起点に、新聞社・出版社の編集部とタイアップ記事をつくる枠組みを始めた。
共通するのは、AIが何を根拠に商品を選び、薦めるのかという点である。イオンネクストは数百項目の商品属性と在庫・配送データを提案の前提に置き、Shopifyは商品カタログと決済を一つの接続で提供する。博報堂は、AIが参照し得る第三者の記事を、広告として明示したうえで用意しようとしている。
AIが売り場になるほど、企業が整えるべきものは「AIが読み取れる正確な商品データ」と「AIが引用し得る信頼できる言及」の二つに集約される。
日本企業にとっての示唆は、両者を別々の部署の仕事として扱わないことである。商品の原材料、規格、在庫、配送条件といった事実は自社と取引先のデータとして整え、評価や比較の文脈は信頼性のある外部の媒体で形成される。AI経由の顧客獲得を測るには、AI回答での言及状況と、AIチャネルからの注文・売上を一続きで追う視点が欠かせない。
問われているのは、AIに見つけてもらう施策ではなく、AIが安心して薦められる事実と評判を、継続的に供給できる体制である。