OpenAIは10月21日、ChatGPT広告の配信システムの設計を解説するエンジニアリング記事を公式ブログで公開した。ChatGPT広告は開始から200日足らずで年換算売上(ランレート)10億ドルに達し、開始以来10万を超える広告主が出稿したとしている。
従来の広告システムは検索語句やページ閲覧といった単発の出来事に反応するが、ChatGPTでは利用者の意図が会話の中で徐々に固まる。そのため、会話の文脈を覚えておく「広告セッション」を持たせ、専用に追加学習したLLM(オーケストレーター)が会話を要約・解釈し、候補の検索、絞り込み、関連性の評価、オークションへの推薦を順に行う。
広告の選定はChatGPTの回答生成とは別のサービス・別のモデルで並行して行い、広告が回答に影響しない構造にしている。回答の生成が先に終わった場合、広告はそのターンでは表示されない。「広告を出さない」ことも正常な結果と位置づける。
同日、OpenAIは別の発表でChatGPT広告を新たに26の国・地域に広げ、提供地域が89になったと公表した。広告は無料版とGoプランのみで、Plus・Pro・Enterpriseには表示しない。日本は既存の提供国である。今後は広告フォーマット、ターゲティング、購入方式、効果測定の機能を開発するとしている。
なぜ重要か
ChatGPT広告は、キーワードに入札する検索広告とは違い、複数ターンの会話全体から商業的な意図を読み取って広告を選ぶ。広告主にとっては、どの語句に入札するかより、どのような相談の文脈で自社の商品が「役に立つ選択肢」と判断されるかが重要になる可能性がある。
また、商品フィード広告の検索インデックスは商品レビューの良し悪しを考慮すると説明されている。日本の広告主も、広告の入稿だけでなく、商品データやレビューの状態がAI広告の配信に影響しうる前提で準備を進める必要がある。
出典:OpenAI公式ブログ「How we built ChatGPT’s novel ad stack for user trust and relevance」(2026年10月21日)
SNS・インフルエンサーマーケティングのLIDDELL株式会社(リデル)は10月21日、「コマース対応AIO」の提供を開始した。2025年7月から提供してきた文章コンテンツ向けのAIEO支援を、商品・サービス情報全体に広げたものである。
AIの回答画面に表示される比較表、商品候補、画像、購入先リンクで自社の情報が正しく使われるよう、価格、仕様、画像、比較の根拠、販売先のデータを整備する。本文ではChatGPT、GoogleのAI検索・AI Mode、Geminiに言及している。
内容は、AIブランド診断(2週間〜、重点商材5件・質問20件・対象環境2種類が標準、10万円・税別)、商品情報台帳や商品フィード・構造化データを設計する商品情報の整備(4〜6週間、個別見積もり)、月次の改善運用(月額20万円・税込〜)の3段階である。
同社は、AIによる引用、比較候補への掲載、画像表示、購入先の掲載は保証しないとしている。TikTokのAIエージェント機能については、仕様公開後に順次対応するとしている。
なぜ重要か
日本のAIO・GEO支援が、「AIに文章を引用されること」から「AIの比較表や購入導線で商品が正しく扱われること」へ対象を広げ始めた。AI検索がショッピング機能を強めるほど、成果を左右するのは記事より商品データの正確さになる。
EC・ブランド企業にとっては、価格・在庫・仕様・画像・販売先といった基本情報が、自社サイト、商品フィード、構造化データの間で一致しているかを点検することが、外部支援を使うかどうかに関わらず最初の作業になる。
出典:LIDDELL株式会社 プレスリリース(2026年10月21日)
株式会社メディアジーンとグループ会社の株式会社インフォバーンは10月21日、人とAIの双方に情報を届ける「AIコンテンツマーケティング支援事業」に向けた取り組みを開始したと発表した。具体的な提供開始日は示されていない。
支援は4段階で構成する。AIがブランドをどう言及・評価しているかを調べるAI可視性調査、そのギャップを埋めるコンテンツ戦略、記事広告・オウンドメディア運用・AIのクロール向けに構造化した「LLM用マークダウンコンテンツ」による制作、人とAIへの影響を測る総合分析である。
メディアジーンは月間約1億PV、17メディアを運営する。TollBitのデータとして、主要デジタルメディアへのAIからのアクセスが2025年第4四半期から2026年第1四半期にかけて増え、前四半期比でしらべぇは103.8%、Digiday Japanは43.8%、Roomieは19.2%増えたとしている。
なぜ重要か
国内の媒体社が、自社媒体へのAIのアクセス増加をデータで示したうえで、AIに読まれることを前提にした広告・コンテンツ商品を設計し始めた。記事広告の価値が「人の閲覧」だけでなく「AIの参照」でも語られるようになっている。
ただし、AIからのアクセス増加がAI回答での言及や送客にどの程度つながるかは示されていない。広告主は、掲載によってAI回答の内容がどう変わったかを、掲載前後の比較で確認できるかを発注時の条件にすべきである。
出典:株式会社メディアジーン プレスリリース(2026年10月21日)
Today's Insight
AIマーケティングの主戦場は「何を書くか」から「どの文脈で選ばれるか」へ
今日の3本は、広告・商品データ・媒体という異なる領域から、同じ変化を示している。AIは単発のキーワードではなく、会話や比較の文脈の中で、どのブランドや商品を示すかを判断するようになっている。
OpenAIが公開した広告システムは、その典型である。専用のLLMが複数ターンの会話から意図を読み取り、広告を出すべきか、出すならどれかを決める。しかも10万を超える広告主が出稿し、年換算売上は200日足らずで10億ドルに達した。会話型AIの広告は、もはや実験的な掲載枠ではない。
AIの広告も自然な回答も、「この相談にとって役に立つか」という同じ問いで選別される方向に進んでいる。
その判断材料になるのが、商品とブランドに関する正確で構造化された情報である。リデルのサービスは比較表や購入導線で使われる商品データを、メディアジーンとインフォバーンの取り組みはAIが参照する記事やマークダウンを、それぞれ整備の対象にした。OpenAIの広告システムも、商品フィード広告の検索で商品レビューの良し悪しを考慮すると説明している。
日本企業にとっての示唆は、AI広告とGEOを別々の施策として扱わないことである。広告で選ばれる条件も、自然な回答で言及される条件も、商品データ、レビュー、第三者媒体での評価という共通の基盤に依存している。
まず自社の商品・ブランド情報がAIにとって正確に読み取れる状態かを点検し、そのうえで広告とAI回答の両方での露出を同じ顧客の検討経路の中で測ることが、AI経由の顧客獲得の出発点になる。